個人開発アプリで用意するのは、プライバシーポリシー(ほぼ必須)と利用規約(必要に応じて)の2つです。名前が似ていますが別物で、求められる度合いも書く内容も違います。ここでは法律の解説ではなく、何を用意して、どこに置くかという公開直前の実務に絞って整理します。連絡先の扱いなど個人開発ならではの迷いどころも取り上げつつ、判断に迷う部分は専門家に相談する前提で読み進めてください。
プライバシーポリシーと利用規約は別物です
「プライバシーポリシー」と「利用規約」は名前が似ているせいか混同されがちですが、役割はまったく違うものです。プライバシーポリシーは、アプリが集めた情報をどう扱うかを説明する文書です。ストアで公開する以上は、基本的に用意を求められる立場のものだと考えておいたほうが安全です。
一方の利用規約は、アプリを使ってもらう際の約束事をまとめたものです。プライバシーポリシーほど一律に必須とは言い切れませんが、課金機能やユーザー投稿・コメント機能があるアプリでは、トラブルが起きたときに自分を守る材料になります。「情報の扱い」と「使い方の約束」で分けて考えると、何を書けばいいか整理しやすくなります。
順番としては、プライバシーポリシーを先に、利用規約を後に考えるのが自然です。前者は公開の条件に関わるので待ってくれませんが、後者は最初のバージョンでは簡素なものから始めて、機能が増えるのに合わせて足していく形でも回ります。
「何も集めていないから要らない」は成立しにくい
「うちのアプリはユーザー情報を集めていないから、プライバシーポリシーは要らないはず」と考える方は少なくありません。ただ、これは意外と成立しにくい前提です。広告を表示する仕組みや、利用状況を把握するための解析の仕組みを組み込んでいれば、開発者が意識していなくても情報がアプリの外に出ている場合があります。
最初にやるべき作業は、文章を書き始めることではなく、自分のアプリが実際に何を外部に渡しているかの棚卸しです。広告表示、ログイン機能、クラッシュの記録、課金処理など、使っている外部のサービスや仕組みを一つずつ洗い出してみてください。使っているサービスの数だけ、確認しておくべき項目も増えていきます。
特に広告や解析は、複数のサービスを組み合わせて使っているケースが多く、後から追加した分だけ確認漏れが起きやすい部分でもあります。棚卸しは一度作って終わりではなく、機能を追加したタイミングで見直す前提のリストだと捉えておくとよいでしょう。
プライバシーポリシーに書く項目の型
棚卸しが終わったら、書く内容自体はそれほど複雑ではありません。プライバシーポリシーで触れておきたい項目には、おおむね決まった型があります。どんな情報を取得するか/何のために使うか/外部の誰に渡るか/どう保存し、いつ削除するか/問い合わせ先はどこか、という5つです。
この型に沿って、棚卸しで洗い出した項目を一つずつ当てはめていくイメージです。広告の仕組みを使っていれば「広告表示のために利用状況の一部が外部に渡る」、解析の仕組みを使っていれば「アプリの改善のために利用状況を記録する」といった具合に、実際にやっていることをそのまま言葉にしていけば埋まります。
先に棚卸しを終えておけば、文章そのものを書く工程はそれほど重くありません。逆に、棚卸しを飛ばして先に文面のかたちだけ整えると、後から「この項目は実際には当てはまらない」というズレが出やすくなります。
個人開発でつまずきやすいのは「連絡先」
項目自体は埋められても、個人開発者が最後に手が止まりやすいのが「問い合わせ先」です。会社として運営しているわけではないので、住所や本名をどこまで書くべきか迷うところです。
この点については、無理に自宅の住所を公開しなくても、連絡が取れる手段を用意しておく形で対応している例が見られます。大事なのは住所そのものではなく、問い合わせ先として実際に機能しているかどうかです。書式が整っているかより、連絡した相手に届くかどうかという実質的な部分を見られていると考えておくとよさそうです。
もうひとつ迷いやすいのが、運営者の名前をどう書くかです。屋号のような呼び名で活動しているなら、その名義とアプリ名が対応していることが分かるように書いておくと、問い合わせを受けたときに話がこじれません。ここも体裁より、読んだ人が誰に連絡すればいいか分かることが目的です。
置き場所と、ストアへの登録も忘れずに
文面ができたら、次は置き場所です。プライバシーポリシーは、アプリ内からもストアの掲載ページからも、どちらからでも辿れる状態にしておくのが基本です。アプリ内にだけ置いてストア側の登録を忘れていたり、逆にストア側だけ用意してアプリ内から見られなかったりすると、指摘を受けることがあります。
無料の生成サービスを使って文面を作ること自体は珍しくありませんが、そのまま使う前に必ずやってほしいことがあります。自分のアプリが実際にやっていることと、文面に書かれている内容が食い違っていないかの読み直しです。取得していない情報の項目が残っていたり、使っていない機能の記述が入っていたりすると、実態と違う文面がいちばん危ない状態になります。
置き場所を用意するとき、専用のサイトを立てる必要はありません。自分のブログの1ページでも、無料で使える置き場でも構いませんが、リンクが切れると審査でも運用でも困るので、長く残せる場所を選んでおくのが実務的です。アプリを更新するたびにリンクが生きているか確認する癖をつけると安全です。
法的な判断が必要な場面は、専門家に相談する
ここまでは「何を用意して、どこに置くか」という実務の流れですが、すべてをテンプレート的な対応で済ませられるわけではありません。子ども向けのアプリ、健康や決済に関わる情報を扱うアプリ、海外のユーザーにも配信するアプリなどは、求められる対応が変わってくる可能性がある領域です。こうしたケースは自己判断で済ませず、専門家に相談することをおすすめします。
判断が要るかどうかの見分け方としては、「扱っている情報が、漏れたときに相手に実害が出る種類かどうか」を考えてみると整理しやすくなります。端末の中だけで完結するメモのようなアプリと、体調や決済の情報を預かるアプリでは、同じ書式では済ませられません。
プライバシーポリシーと利用規約の準備が整えば、公開に向けたやることは一段落です。次に待っているのは、作ったアプリを誰かに見つけてもらう準備です。どんな言葉で探されそうか、そのジャンルにはどれくらいの検索需要があるかは、公開前の段階でもAppLupeのようなツールで確認できます。メール登録だけ(カード不要)で毎日3回まで無料で調べられるので、審査提出の待ち時間に検索キーワードを眺めておくのも一つの使い方です。
よくある質問
Q. プライバシーポリシーは全ての個人開発アプリに必要ですか?
情報を集めていないつもりでも、広告や解析の仕組みを使っていれば情報が外部に渡っている場合があります。ストアに公開する以上は用意しておく立場だと考え、まずは自分のアプリが何を外に出しているか棚卸しすることをおすすめします。
Q. 利用規約は無くてもいいのでしょうか?
プライバシーポリシーほど一律には求められませんが、課金機能やユーザー投稿・コメント機能があるアプリでは、トラブル時に自分を守る材料になります。機能が増えるタイミングで用意を検討するとよいでしょう。
Q. 無料の生成サービスで作った文面をそのまま使っても大丈夫ですか?
型を埋める手段としては便利ですが、自分のアプリが実際にやっていることと内容が食い違っていないかの読み直しは必須です。取得していない情報の記載が残っていたりすると、実態と違う文面はかえって危ない状態になります。
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